デイトナ Ref.6263 ザ・レジェンド 3本目

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史上最高額を記録した翌日の出来事

それは2017年5月14日、「最後の皇帝」と呼ばれたバオ・ダイが愛したトリプルカレンダー ムーンフェイズ,Ref.6062が、506万ドルというロレックスの時計としての史上最高値を更新した翌日のことでした。

まだ熱気冷めやらぬラ・レゼルブ・ジュネーブホテルに特設されたオークション会場に最終ロットナンバーで登場した、その名も “ザ・レジェンド” 、イエローゴールド製のRef.6263が、二人の紳士達による「伝説的」なバトルの末3,717,916ドル(およそ4億1千万円)まで昇り詰め、デイトナとして史上最高値を更新して見せたのです。

2017年5月 phillips落札アーカイブ
2017年5月 phillips落札アーカイブ

「ザ・レジェンド」

「レモン・グレーン」と呼ばれる、スチール製モデル用のアイボリーダイヤルとははっきりと異なる、淡いイエローの表面を荒らしたポールニューマンダイヤルと、スクリューロックのプッシュボタンを兼ね備えるこのゴールド製のデイトナは、今回のオークションピースが出現するまではたった2本しかサンプルが存在しないとされていたものであり、こうして今回3本目が出品されることが公表されて以来、世界中から熱い注目を浴びていたのです。

デイトナ Ref.6263 ザ・レジェンド 3本目
画像:phillips.com デイトナ Ref.6263 ザ・レジェンド

多くのコレクターや研究家たちの間では、長年に渡ってゴールドケースのスクリューロックのプッシュボタンを持つデイトナに、ポールニューマンダイヤルを採用したモデルは存在しないのではないかと囁かれていました。

実際にどれだけデイトナやポールニューマンダイヤルが持てはやされ、高値が付くようになっても、誰にでも非常に分かり易い意匠を兼ね備えるこのデイトナが、実際に市場に現れることはずっとなかったのです。

ロレックスの試行錯誤の中で生まれた伝説

初めて国際的なオークションの大舞台にお披露目されたザ・レジェンドは2013年、ジュネーブで開催されたアンティコルムのオークションでした。

841,300スイスフランという、当時としては充分に衝撃的な価格での落札となったその個体は、アンティコルムによってプロトタイプとして紹介されていました。

アンティコルムで落札された オイスターコスモグラフ デイトナ プロトタイプ
画像:antiquorum.swiss ゴールド デイトナRef.6263? ポールニューマン プロトタイプ

その個体には2330402というシリアル番号が打たれており、確かにシリアル番号からすれば先代のRef.6262やRef.6264であっても不思議ではない程の、Ref.6263としては極めて初期のものであったのです。

そして今回フィリップスに登場した個体はシリアル番号が2330529と打たれている個体であり、そしてもう一本だけ確認されているRef.6263にもこれと30程度しか離れていないシリアル番号が打たれているといわれています。

レモンイエローの特殊性

そして何より重要なのは、ザ・レジェンド程ではないにせよ、オークションに登場すればコンスタントに1億円を越えるといわれるモンスターピース「オイスターダウン」、すなわち文字盤12時位置の王冠の下のプリントが “ROLEX / COSMOGRAPH / OYSTER” となっている、他のリファレンスの為に製作された文字盤に、後から “OYSTER” を加えた文字盤とははっきりと異なることです。

左:デイトナ ザ・レジェンド 右:オイスターダウン
画像:phillips.com 左:デイトナ ザ・レジェンド 右:オイスターダウン(RCO)”

ザ・レジェンドに特有のレモン色の文字盤では、” ROLEX / OYSTER / COSMOGRAPH “の表記となっており、プッシュボタンにもスクリューロックを加えてオイスターを名乗る事を前提としたモデルの為に作られたものであることでしょう。

この幻のレモンイエローのダイヤルは1969年当時のデイトナとしてのディテールを完璧に備えるものであり、もはや疑う余地のない、オリジナルであると誰もが認めるものとなり、研究家として名高いプッチ・パパレオ氏による著書、 “ The Ultimate Rolex Daytona “ にも “ The Legend “ として掲載されました。

18Kイエローゴールドのスクリューロックのプッシュボタン
画像:phillips.com

落札価格の高騰の中で

ロレックス、中でも手巻きのデイトナの取引価格の高騰はとっくに手の付けられない程のものであり、一方恐らくは世界で唯一、本当の本物を知っているはずのロレックスが何も語らず、その修理を断り始めてから随分と時間が経過した現在。

たった一枚の文字盤の為に何百万円もの投資が可能な状況の下、現代ならではの最新技術を前提とした過去の製法の再現はもとより、様々なエイジング技術も研究が重ねられていると見られる中で、今後研究家たちは何を持って本物を定義していくのでしょうか。

ロレックスの伝説は、知識を積み重ねてきた者たちによって守られていくべきものと、筆者は信じています。

オイスターコスモグラフ 6263(6239) ポールニューマン レジェンド

製造:1969年
ケース: 18K イエローゴールド
ムーブメント: 手巻き cal. 727

 

情報元:phillips.com ほか

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加藤

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