年間100億ドル以上を売上げ、世界の高級時計市場のシェアの実に30%を占めるといわれる時計業界の圧倒的王者、ロレックス。
その影響力は業界や国境の垣根を越えて拡大の一途をたどっており、2025年に創業120周年の節目の年を迎えるロレックスは一体どのような動きを見せるのか。
4月1日に開催予定のWatches and Wonders 2025を間近に控え、大いに注目が集まっています。
画像:www.watchesandwonders.com
ムーブメントの世代交代を終えて
2024年にもロレックスはWatches and Wonders 開催のタイミングで多彩な新作を発表、と同時に公式サイトからひっそりと姿を消したモデルも有りました。
画像:www.rolex.com
その時点でロレックス独自のクロナジーエスケープメント、またはシロキシヒゲゼンマイのどちらも備えていないモデルが遂に一本も無くなり、2014年のCal.2236、そして2015年のCal.3255登場から10年以上をかけて継続されてきたムーブメントの世代交代が遂に完了しました。
中国の高級時計輸入の大幅減をはじめとする国際的な時計市場の変化の中、今後ロレックスはどこに向かっていくのか、2025年は特に予測が難しい年といえるでしょう。
2025年 ロレックス廃盤予想
今年廃盤になるモデルはどれか、想像を膨らませてみましょう。
廃盤予想1.GMTマスター126720VTNR
先述の通り2025年はロレックス創業120周年であると共に、
デイトジャスト 80周年
GMTマスター 70周年
という年でもあります。 少なくともこれらにまつわる何らかの新作が登場する、となれば、それと同時に何らかの廃盤が発生する可能性が有る、と考えられます。
例えば、GMTマスター II について、Ref.126711CHNRのジュビリーブレスレット付きモデルやRef.126713GRNRのオイスターブレスレット付きモデルがそのうち登場するのではないかとも考えられますし、2024年にRef.126710GRNRが追加され、合計で4種類になったスチール製のモデルのどれかが淘汰されるという可能性も考えられます。
画像:www.rolex.com
更に筆者も昨年ここで提案させていただいたGMTマスター II の原点であるコークベゼル、すなわち黒と赤のツートンのベゼルが今度こそ復活するのではといった記事が他のメディアでも散見されております。 とすれば何かとにぎやかなGMTマスター II の既存モデルから廃盤が発生する可能性が否定できず、最近の傾向としてニッチなモデルから淘汰されている感が有ることから、今度こそRef.126720VTNRが廃盤になるのでは、と想像をたくましくしてみます。
ロレックスはこのレフティモデルの為のムーブメントに、右腕に装着した際に想定される外乱に対する特別な調整を施しているといわれており、このモデルは何かと製造コストが高いと想像される点も挙げておきましょう。
廃盤予想2.ターコイズ、グリーンダイアルのモデル
ここで最も分かりやすいのは2020年に突然変異のように登場したオイスターパーペチュアルのカラフルダイアルのモデル達、2023年にはセレブレーションモチーフが追加されましたが、イエローやオレンジなどは早々に廃盤になっており、現存するターコイズやグリーンもそのうち整理されるのでは、と見られています。
画像:www.rolex.com
これらがかつて存在したデイデイトのステラダイアルのようなことになるのか、ならないのかについては想像が付きませんが、もしかすると、セレブレーションモチーフや、デイデイトのジグソーパズルダイアルなども、買うなら今のうち、なのかも知れませんね。
廃盤予想3.ディープシーRef.136668LB ほか
これについては全く根拠が無いと申し上げざるを得ませんが、2025年1月のロレックスの価格改定において、ゴールドモデルの値上げが大変目立っていたことを考えると、スチールモデル以上にゴールドモデルの淘汰を進めるのではないか、と思えなくもありません。
価格が上がれどロレックスの時計は売れ続ける、これはまだまだ続いていくはずであり、どこにブレーキが有るのか全く見えない状況ではありますが、多少の調整が入る可能性もまた、否定できないのではないでしょうか。
画像:www.rolex.com
ゴールドモデルについてもニッチなモデルから廃盤になっていくとすれば、先述のデイデイトのジグソーパズルダイアル、そして昨年登場したばかりながら320グラムを越える超重量級のディープシーRef.136668LBなども、現在の状況が続けば意外な程の短期間で廃盤になる可能性を感じます。
廃盤の理由
ロレックスがこれまでに廃盤を決定してきたであろう理由についても、具体例を挙げながら見ていきましょう。
廃盤の理由1.ムーブメントの世代交代
腕時計の黎明期から一貫して国家を代表する偉大なリーダー達に愛され、信頼される腕時計を目指してきたロレックスは、彼らのステイタスシンボルとして相応しい腕時計を創造し、改善を重ねてきました。
ロレックスの時計において、「最新が最良」であることはあくまでその結果に他ならず、最良である為の選択肢は時代と共に進化することは有っても、同時に多くの選択肢を生むことはない、ということでしょうか、ロレックスは常にムーブメントの種類を最小限に抑えてきた歴史を持っています。
すなわちその時点で最高のパフォーマンスを発揮するムーブメントのみを製造し、かつそれに専念することで更に磨きをかけていく、これはロレックスならではの驚くべき一貫性の一つといえるでしょう。
画像:www.rolex.com
例えばCal.3130、Cal.3135、Cal.3185など、非クロノグラフで同じ直径の複数のキャリバー番号が同時に存在したとしても、それらの違いはあくまで付加機能のみに絞られ、その主輪列の構成や振動数などのバリエーションが派生した事は無く、それ故にロレックスのムーブメントには「世代」と呼ばれる分かりやすい概念が存在します。
新世代のムーブメントが誕生した際にまず採用されるモデルはフラッグシップであるデイデイトであることが多いですが、これを皮切りに何年もかけて新世代のムーブメントを全コレクションに浸透させていきます。
直近の例として、先述の通りCal.3100系からCal.3200系への移行は2015年から2024年の9年間で行われました。
廃盤の理由2.技術の進化
例えばミルガウス。
1950年代に非鉄製インナーケースを追加した二重ケースによる、1000ガウスの磁場に耐えられるエンジニアの為の特殊時計として誕生したミルガウスは、二世代目のRef.1019が1988年に廃盤となって以来、長らくの休眠状態となっていましたが、2007年に突然の復活を果たし、電子機器の発展とそれらが発生する磁場の増殖が進む現代社会に新たな活躍の場を見出しました。
画像:www.rolex.com
しかしオメガが2013年に発表したシリコンやその他の非磁性パーツで構成されたムーブメントによる15,000ガウスの強力な磁場に耐える腕時計の普及により、日常生活にて遭遇する可能性のある磁場はもはや機械式時計の敵ではなくなったと共に、二重構造の耐磁ケースがもはや時代遅れとなったことを否定しにくい状況となりました。
そんな中、ロレックスはチューダーブランドで基本的にはオメガと類似する思われる手法による耐磁時計を製作し、徐々にそのバリエーションを増やしていますが、ミルガウスがマーケティングの点で以前ほどの力を持てなくなったことは確かでした。
そのような状況の中で毎年のようにミルガウスに注目が集まっていましたが、2023年、遂に公式サイトから姿を消し、その後継機が現れないまま、はや2年が経過しようとしています。
廃盤の理由3.人々が求めるものの変化
また2000年代以降にリファレンス番号が5桁から6桁に移行した際の変化、例えばRef.16610とRef.116610LNを比較すると、ブレスレットがソリッドパーツのみで構成されるようになり、ベゼルインサートにセラミックが採用され、逆回転防止ベゼルが正確な1分刻みのクリック感を伴って回転するようになるなど、¬外装の全面刷新が行われました。
ここに繰り返すまでもなく、Ref.16610は現在においてもダイバーウォッチとしてのタフネスを充分に備えたモデルであることに疑いはないはずですが、腕時計に人々が求めるものの変化、特にプレートのプレス成型によって製造していたブレスレットのクラスプ部などの「質感」が、同時期の同価格帯の他社製品と比較して見劣りしてしまう、との指摘を再三受けるようになっていた、という事実がありました。
これに対してロレックスは2010年にRef.116610LNに過剰なまでに頑丈で、経年耐性にまで配慮された「ラグジュアリー」と呼ぶに相応しい外装を与えることで、ファンを驚かせました。
ほとんどのモデルにおいてムーブメントのメジャーな進化を伴わなかったこの時期の一連のモデルチェンジは、ロレックスの歴史の中でも珍しい事件であったのではないでしょうか。
廃盤の理由4.バリエーションの整理
特にダイアルのバリエーションが豊富なデイトジャストを中心として、新しいデザインのダイアルがリリースされた場合、その陰で公式サイトからひっそりと姿を消すダイアルバリエーションも存在することが多いです。
直近では2024年、フルーテッドモチーフをはじめ、まだ廃盤にするにはもったいないと思えるような人気の高いバリエーションも姿を消しています。
廃盤の理由5.その他
例えば見事な七色のグラデーションで人気の高いRef.116595RBOWをはじめとする歴代のデイトナ レインボーに象徴されるハイジュエリーピースには、その製作を可能とする天然石の入手が困難になってしまうものがあり、これが人気が出たとしても製作を継続できない要因の一つといわれています。
何が起きても不思議ではない?
特許情報プラットホーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)によれば、ロレックスは毎年のように様々な特許申請を行っており、少なくとも現状に甘んじることなく、常に前進を続ける姿を確認することが出来ます。
昨年ムーブメントの世代交代が完了したばかりのロレックス、今年はどのような動きを見せるのか、いずれにせよ4月1日には全てが公開されるはずです。


最新記事 by 加藤 (全て見る)
- ロレックス廃盤予想 2025年 - 2025年3月22日
- 2025年3月の星座占い& “運が良くなる?” 時計の話 - 2025年3月1日
- 2025年2月の星座占い& “運が良くなる?” 時計の話 - 2025年2月1日