ロレックス デイトナ ref.6265 "ユニコーン"

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幻の手巻き・ホワイトゴールド製のデイトナ

2018年5月12日、フィリップスがジュネーブで開催した「デイトナ アルティメイタム セール」に18Kホワイトゴールド製のデイトナ、Ref,6265が出品され、5,937,500スイスフラン(およそ6億4700万円)という驚愕の落札価格を記録しました。

2017年に506万ドルを記録したバオ・ダイのRef.6062を越えて、同年のポール・ニューマンのデイトナに次ぐロレックスの時計として歴代第二位となったこのデイトナは、これまでスチール製と18金、または14金のイエローゴールド製しか存在しないと信じられてきた手巻きのデイトナの常識を覆す存在として、世界中のコレクター達の熱い視線を集めたのです。

ホワイトゴールドを使用したデイトナref.6265
画像:phillips.com ホワイトゴールドを使用したデイトナref.6265

謎多きオンリーピース

このホワイトゴールド製のRef.6265について伝えられていることは、

a、1970年にドイツはドルトムントのディーラーの顧客の要望に応えて1本のみ製造され、その翌年に販売された事

b、裏蓋の裏に過去数回に渡ってロレックスのサービスセンターにてメンテナンスを受けた痕跡が残されており、その中にジュネーブのロレックスのサービスセンターのサインも含まれている事

上記aについて、ロレックスが特注品を製作すること自体が稀ですが、しかも1本だけとなると、モデルに寄らず、恐らくはほとんど例がない事と思われます。

そして上記bについては、熱心なロレックスのコレクターならだれもが知る通り、もし時計に悪意ある改造が施されていた、または贋物であった場合、ロレックスの正規サービスセンターは修理を受けてくれないばかりか、ジュネーブのサービスセンターについてはそういった時計はそのまま回収となり、持ち主がそれを取り返そうと裁判を起こしたとしてもロレックスは決して屈しないといわれています。

時計研究家、ジョン・ゴールドバーグ氏の大発見

この時計の存在が知られるようになったのは2013年の11月にアメリカの時計メディア、Hodinkeeに、その創設者であるベンジャミン・クライマー氏と、時計研究家として、また熱心な時計コレクターとして世界中の時計ファンに広く知られているジョン・ゴールドバーグ氏の対談にて、ゴールドバーグ氏がプライベートコレクションのひとつとして紹介したことがきっかけでした。

ゴールドバーグ氏がこの時計を初めて見た時、当然スチール製であろうと思ったそうですが、いざ手に取ってみた時に伝わってきたゴールドならではの重量感に、言葉を失う程に驚いたといいます。

この大発見は当時大いに話題となり、瞬く間に世界中のコレクターや時計関係者に知られることになりましたが、その桁違いの希少性からか、いつしか白く輝く幻の一角獣、ユニコーンとの愛称で呼ばれるようになり、伝説的な存在となっていたのです。

手巻きムーブメント cal.727
画像:phillips.com 手巻きムーブメント cal.727

ユニコーンのブレスレットについて

またゴールドバーグ氏が2010年頃に購入したといわれるこのRef.6265には、当初ストラップが付いていなかったようですが、彼はこの貴重な時計にオリジナルの仕様のストラップを用意したかったといいます。

しかし後にも先にも1本しか存在しないこのRef.6265には何の資料も残されておらず、“100 Superlative Rolex Watches” をはじめとする数多くの著作で有名な時計研究家であるゴールドバーグ氏をもってしても、そのオリジナルの姿を突き止めることは出来ませんでした。

そこで彼のコレクションの一つである、1969年製でバーク仕上げのベゼルを持つホワイトゴールド製のオイスターパーペチュアルデイト、Ref,1507に付いていたバーク仕上げのブレスレットをフィットし、現在の姿になったといわれています。

Ref,1507のバークブレス
画像:phillips.com Ref,1507のバークブレス

ユニコーンの文字盤

ちなみにこのRef.6265には、1970年当時最新であったと思われるデイトナ表記が無く、6時位置の “T SWISS T” の両側に、文字盤に貴金属を使用している事を表す、ギリシャ文字の“σ” があしらわれた通称でシグマダイヤルと呼ばれる文字盤がフィットされており、そのバーインデックスにはケースと同じホワイトゴールドが使用されています。

通称 シグマダイヤル
画像:phillips.com “σ”表記の通称 シグマダイヤル

またエキゾチックダイヤルを除くイエローゴールド製のRef.6265には、見渡す限り全てにクロノメーター表記が有りますが、恐らくはスチールモデルの文字盤をそのまま流用したこの文字盤にはクロノメーター表記が無い事も大きな特徴といえるでしょう。

ホワイトゴールド製のプッシュボタン

更に面白いのはプッシュボタンでしょう。

見た目はRef.6240などに使われていたマーク0等と呼ばれるスクリューロックのすべり止めが細かいタイプに似ていますが、明らかに通常のデイトナのボタンよりも長く見えるのです。

プッシュボタンもケースと同じホワイトゴールド製といわれていますが、この形も実にユニークです。

長めのスクリューロック式プッシャー
画像:phillips.com 長めのスクリューロック式プッシャー

リューズは現在スチール製の通常のトリプロックが付いていますが、オリジナルはやはりホワイトゴールド製だったのかも知れませんね。

ジョン・ゴールドバーグ氏のこだわり

ともあれ、ゴールドバーグ氏が愛し、8年間を共に過ごしたユニコーン、フィリップスに出品を打診されて一旦ははっきりと断ったそうですが、子供達の為になればと、思い直したといいます。

そしてこのオークションによる収益は、全て恵まれない子供たちの為に寄付されました。

時計、特にデイトナという時計は、その余りに絶大な人気と天井知らずのプレミア故にマネーゲームの媒体のように扱われがちですが、だからこそユニコーンを営利目的では売りたくなかったのではないか、この度ゴールドバーグ氏について様々な資料を拝読して氏の時計への情熱の欠片に触れさせていただき、個人的にそのように感じました。

ロレックス デイトナ ref.6265 “The Unicorn”

製造:1970年代
ケース: 18K ホワイトゴールド
ムーブメント: 手巻き cal.727 

情報元:phillips.com ほか

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加藤

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