いつもオロロジャイオをご利用いただきありがとうございます。
テクニカルディレクターの石田です。
時々修理の際に「少し油をさしておいて」、「ちょっと油吹きかけておいて」とご依頼いただくことがありますが、実際の作業に沿わず、お返事にややとまどうことがあります。
そこで今回は時計のオーバーホール(分解掃除)の注油について説明をさせていただきます。
【注油の前に、まず時計のオーバーホールとは】
オーバーホール(分解掃除)は、腕時計を分解して洗浄したのち、組み立てながら注油を行う作業の事をいいます。時計の内部に使用される油の変質は3~4年と言われており、乾いてきたり、汚れて変質が進み(油切れと言われる状態)そのまま放置をしておくと、精度不良⇒動作不良⇒部品不良の原因となります。
【注油とその散布量】
注油作業は、オイラーと呼ばれる針ような細い専用工具を使用し、適量(微量)を必要な部分に注していきます。量はとても微量です。油が少なければ動かなかったり調子が上がりませんし、多ければ精度を狂わせたり、油が邪魔し歯車の動きを止めてしまいます。
部品は小さく細かい作りの為、作業もルーペや顕微鏡を使用しながらの繊細な作業となります。使用するオイル・箇所・量・手順などはある程度決まっていますが、細かな部分は職人的な経験が生かされ、時計技師としての腕が最も発揮される作業です。
【油の大まかな種類と使用箇所】
油の種類はグリーズのようなものから、サラサラとしたものまで粘度の違う専用の油を1つの時計でも4~5種類使い分けます。
グリースのような重たい油は、リューズを操作し、その力が加わる歯車の軸やレバーなどの部品どうしが擦れる部分に。軽めの油は、時計の針を動かす歯車のホゾの人工ルビー(石)などの部分に注油します。
腕時計内部は、小さなホコリひとつでも動作不良になる精密機械です。一度、残っている油や汚れなどをすべて落とすために部品を分解し、洗浄・掃除をしたうえで、注油と確認をしながら組み立てなおしていきます。
【時計の注油まとめ】
オーバーホール・注油がどのように行われるのかは、お客様にとっては作業を見る機会が少なく、イメージがわきずらい工程だとおもいます。
自転車のチェーンや、ドアのヒンジの調子が悪くなった時のようにご自宅で油を注す感覚ではなく、場所によって油を使い分け、且つ注油量がお時計の精度に関わってくる繊細な作業なのです。
冒頭のおはなしは、ご自身のお時計に対する想いがあるゆえのご指示かと思いますが、内部機械のことに関しては、ぜひご安心して私どもにお任せ頂ければと思います。
個体差は出てしまいますが、なるべく1日の誤差は数秒進み程度の精度にまで仕上げてお返しいたします。
【時計修理専門店オロロジャイオ】
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時計修理専門店オロロジャイオの腕時計修理技師。
アンティークウォッチから高級ブランド時計まで、腕時計の修理に関する情報をおとどけいたします。
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石田
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