ブレゲ タイプXX  オンリーウォッチ2021

ONLY WATCH 2021

モナコ筋ジストロフィー協会(Association Monégasque contre les Myopathies)が支援するデュシェンヌ型筋ジストロフィーの研究者達への直接的なリソースの供給を目的として、2005年の第一回から2年に1度のペースで開催が続けられているチャリティーオークション、ONLY WATCH。

2021年に第9回目を迎えるONLY WATCHには、今回も53のウォッチメーカーによる魅力溢れるユニークピース達がエントリーされ、世界中のウォッチファンの注目を集めています。

「タイプ20」と「タイプXX」

そんなONLY WATCH 2021にスイス屈指の名門、ブレゲが用意していたのは、「タイプXX」の復刻モデルでした。

ブレゲに残されている1950~1960年代当時の出荷台帳には、軍用として出荷された時計は「タイプ20」、民間用として出荷された時計には「タイプXX」として記されているといいます。

今回登場した「タイプXX」はすなわち、民間用として出荷された時計を復刻であることを示しており、2年前に開催された前回のONLY WATCH 2019にブレゲが出品した「タイプ20」は軍用として製作された初期の時計を復刻したもの、と説明されています。

Type20 2055ST/Z5/398

画像:Type20 2055ST/Z5/398

再び現代に蘇ったバルジューの古典

オリジナルのタイプ20、及びタイプXXに共通して採用されたムーブメントは、直径14リーニュ(約31.6mm)のバルジューCal.222をベースとしていましたが、2019年、そして2021年のオンリーピースにはオリジナルと同様の水平クラッチ、コラムホイール式のクロノグラフ機構や18,000振動/時のロービートなど、古典的クロノグラフの魅力を満載しながらも、13リーニュ(約29.3ミリ)に小型化された後継機、バルジューCal.235をベースとしています。

ブレゲが今回特別に磨き上げ、現代に蘇らせたこれらのムーブメントは、それだけでも世界中の時計ファンを熱狂させるに充分な、計り知れない訴求力を持っているといえるでしょう。

ブレゲ タイプXX 2065ST/Z5/398

タイプ20、タイプXXに共通する最大の特徴であるリスターティング・フライバック機能が付加されていることは、ここに繰り返すまでも無いでしょう。

再現された「失われた意匠」の数々

その外観もオリジナルに忠実な38.3ミリ径の頑丈なスクリューバックケースに加え、2019年モデルがコインエッジを持つ回転ベゼルやスモールセコンドと同じ大きさの30分積算計、そしてオニオン型リューズなどのタイプ20の第一世代と呼ばれるオリジナルの意匠に忠実であったのと同様に、12時間刻みのインデックスを配した回転ベゼルやビッグアイと呼ばれる拡大された30分積算計とティアドロップ型の分積算計針、注射器型の長短針など、2021年モデルもまた第二世代と呼ばれるオリジナルの個性的な意匠にあくまで忠実です。

ブレゲ タイプXX 2065ST/Z5/398

文字盤にはブラックダイヤルが歳月をかけて退色したかのようなトロピック・ブラウンに仕上げられており、ほんのりベージュに染まったスーパールミノヴァを盛られた夜光針やプリントインデックスと共に、ビンテージテイスト溢れる仕上がり。

公開されている画像を眺めている限りでは、ドーム型のプレキシガラス風防を再現したサファイアクリスタル風防が見せる光の屈折に、プレキシガラス風防にはない雰囲気を感じてしまうものの、現代的な技術によって形成され、仕上げられたケースには、ツールウォッチとして生まれたオリジナルの素朴な雰囲気を損なうことのないシンプルなスタイルを維持しながらも、ラグに施されたファセットをはじめ、ブレゲらしい上質で丁寧な仕上りが見られます。

ブレゲ タイプXX ラグ、コインエッジ

そしてもうひとつの大きなポイントは、2019年モデル、2021年モデル共に、ムーブメントを覆い隠してしまうソリッドのケースバックを一貫して採用している点でしょう。

現代のスウォッチグループの技術力からすれば、トランスパレントのケースバックを採用しながら並以上の耐磁性能や防水性能を実現する事は決して難しい事ではないはずですが、あえてオリジナル同様のソリッドバックを採用することで、飾り気のない、古典的なツールウォッチならではの雰囲気を損なう事が無かった、これについては賛否両論あると思われますが、オリジナルの軍用時計を意識したと思われる、シンプルで明瞭な刻印と共に、多くのファンの共感を得られる仕様と考えられます。

ブレゲ タイプXX 裏蓋

また2019年に出品された時計と2021年に出品されている時計はすなわち、文字盤、針、ベゼル、リューズ、そして裏蓋の刻印を変更しただけのバリエーションと捉えることも可能ですが、初期のパイロットクロノグラフならではの意匠に溢れる第一世代と比較して、より洗練された個性的な意匠が際立つ第二世代に忠実なこの「タイプXX」に熱狂しないファンの方が少ない事は、誰の目にも明らかでしょう。

民間用タイプXX 軍用タイプ20

オンリーピースに終わらせるには余りにももったいない存在

オメガが古典的な名機として揺るぎない名声を誇る、オメガCal.321を復刻できたのは、そのベースムーブメントを製作したレマニアが、オメガと同じスウォッチグループに属するブレゲの一部としてその伝統を守っていることが、ポジティブな要素として作用したのではないかと、筆者は想像していますが、同様にバルジューの古典的名品達についても、レイモンド家よりバルジューの末裔であるCal.7750の製造を受け継いだETAもまた、スウォッチグループの一員であることから、ブレゲさえその気になれば、これらを再び量産ラインに載せることも可能なのではないか、と考えるのは、過ぎた発想でしょうか。

またブレゲには、Cal.CH27として1940年代に誕生し、21世紀に至るまでその伝統的な意匠を維持しつつも洗練を重ねてきた古典的傑作、Cal.533.3を採用するという選択肢も有るはずです。

Cal.533.3
画像:breguet.com Cal.533.3

更には一般に売り出される事が無い、「軍用」として製造された時計を復刻した2019年の「タイプ20」の落札額は、エスティメートを遥かに上回る210,000スイスフラン(=約2,270万円)にまで及び、元々が世界でたった1本のみが製造されたに過ぎないユニークピースであっただけに、オークション終了後はそのまま幻のように、一般の目に触れる機会の無いものとなってしまいましたが、「民間用」として、一般に売り出された時計を復刻した2021年モデル、これが形を変えて量産されることはないのでしょうか。

2065ST/Z5/398

いずれにせよこれらの「タイプ20」と「タイプXX」は、世界中のコレクター達にとって、たった1本ずつで終わってしまうには余りにももったいないと感じさせるものであることに、違いは無いでしょう。

ONLY WATCH 2021のオークションはスイスのジュネーブにて、2021年11月6日日曜日、クリスティーズによって開催されます。

ブレゲ タイプXX  オンリーウォッチ2021 2065ST/Z5/398

ムーブメント:バルジュー 235. 13
パワーリザーブ:45時間
ケース:ステンレススチール
防水性能:30M
製造数:1本

情報元:www.onlywatch.com

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加藤

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