GAME CHANGERS における最高落札額を記録
フィリップスが主催する腕時計のオークション、”GAME CHANGERS” が2019年12月10日にニューヨークにて開催されました。
フィリップスが腕時計のオークションのフラッグシップとして位置づけるこのオークションには、ポール・ニューマンダイヤルのデイトナやパテック・フィリップのグランドコンプリケーションはもとより、マーロン・ブランドやジャック・ニクラウスが愛用した時計など、今回も世界中の熱い注目を集めるアイテムがずらりと並びましたが、その中でも変わり種として一際注目を集め、さりげなくも最高落札額を叩き出したのが、ここにご紹介するウルベルクのアトミック メカニカル コントロール(以下AMC)だったのです。
画像:phillips.com
数々の栄誉に輝いた歴史的タイムピース
2018年のバーゼルワールドにてお披露目され、国際的な時計メディアである”REVOLUTION”によって2018年のウォッチ・オブ・ザ・イヤーに選出され、2019年のジュネーブ ウォッチメイキング グランプリにおいては”AUDACITY PRIZE”(直訳すれば大胆賞)に輝いたこのAMCは、317年間で1秒の誤差しか出ないといわれる原子時計とGPSで同期したマスタークロックと、機械式の腕時計からなるシステム。
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腕時計からストラップ一式を取り外してマスタークロックにセットすると、マスタークロックが腕時計のゼンマイを巻き上げ、原子時計が刻む基準時刻と腕時計の表示する時刻の誤差を察知して時刻修正を行うと共に、ユーザーの癖による誤差の傾向をマスタークロックに内蔵するコンピューターに蓄積、分析の上、常にそのユーザーにとって最適な歩度を目指して緩急調整を行う機能を持っており、かつこれらの機能の全てが自動でも、手動でも自在に操作可能としています。
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あくまでユーザビリティを優先
このシステムによってユーザーは煩わしい操作から解放され、常にマスタークロックによって最適化された状態で腕時計を着用することが出来ます。
腕時計はダブルバレルによる80時間のロングパワーリザーブを持つ手巻きムーブメントを搭載しており、8時位置のパワーリザーブ表示によって巻上げ残量を確認可能です。
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先述の通りマザークロックによって巻上げ可能ですが、6時位置のリューズ操作により通常の手巻きも可能です。
また10時位置にはオイル交換インジゲーターを備えており、約3年半時計が動き続けるとメンテナンスを推奨する表示となります。
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こうして様々な腕時計の状態を可視化することで、ユーザーが常に安心して腕時計を着用可能としているこのシステムは、ウルベルクらしいデザインも相まって一見非常に尖っているように見えますが、そのコンセプトは何と220年も前にかの天才の誉れ高きアブラアン ルイ ブレゲが目指したものを現代の技術を活かして進化させたものであると、ウルベルクは説明しています。
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ブレゲが夢見たシステムを実現したAMC
1795年、ブレゲはユーザーによる煩わしい操作無く、ゼンマイの巻上げ、時刻合わせ、そして歩度調整までもを可能とする時計を発想、1798年にパリで開催された展覧会において初のシンパシック・クロックを発表。
シンパシッククロックに取り付けられたホルダーに懐中時計をセットすると、懐中時計のゼンマイの巻上げとマスタークロックに合わせて時刻修正を自動的に行うこのシステムは、極めて独創的な機構を持つものであり、ブレゲはその後も挑戦を続けて合計で5~6のユニークピースを製作しましたが、当初に発想した3つの必要な操作、すなわち巻上げ、時刻合わせ、そして歩度調整のうち2つを可能とすることは出来ても、3つとも同時に可能とするシステムを実現する事は出来なかったといわれています。
ここにウルベルクは、1795年にブレゲが発想したシステムを、当時では想像することすら不可能であったはずの高いレベルで実現して見せた、それがAMCなのです。
画像:phillips.com
ウルベルク アトミック メカニカル コントロール
ムーブメントNo: Wristwatch #001
時計素材:PVDコーティングチタン
クロック:アルミニウム
落札日:2019年12月10日
落札価格:2,900,000 USドル
情報元:phillips.com ほか
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