2020年前半はコロナ禍による影響によって開催を見合わせていたものの、6月のジュネーブウォッチオークションXIを皮切りに7月には香港ウォッチオークションX、そして11月にはジュネーブウォッチオークションXII、続いてレトロスペクティブ:2000-2020と精力的な活動を続けるフィリップスのウォッチ・ディビジョンは、11月の初めに2020年の締めくくりとなる“RACING PULSE”と称するウォッチオークションのカタログを発表、その驚愕のラインナップで世界中に話題を振りまいています。
画像:phillips.com
パテック・フィリップのRef.1415 ワールドタイムやRef.2499 グランドコンプリケーション、ロレックスのRef.6263 デイトナのRCOなどの珠玉のビンテージからF.P.ジュルヌやリシャール・ミルによる現代的なコンプリケーションまで、流石としか表現のしようのないハイクラスなコレクターズアイテムがずらりと並んでいるのは毎度の事、今回はこれらに加えて、ハリウッドスターにまつわる伝説的な時計が3本もラインナップされたのです。
1、ポール・ニューマン氏が愛用したロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6263
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2017年10月26日、驚愕の落札額を記録し、ニューヨークに歴史的な夜をもたらしたポール・ニューマン氏のRef.6239は1972年に、彼の愛妻、ジョアン・ウッドワードさんからプレゼントされたものでした。
そして今回出品されたRef.6263もまた、1983年に結婚25周年の記念として彼の愛妻からプレゼントされたものといわれており、そのの裏蓋にもRef.6239と同様に、“Drive slowly / Joanne”と愛情溢れるメッセージが刻まれています。
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前回のRef.6239がアイボリーの、いわゆるポールニューマンダイヤルを備えていたのに対して、今回のRef.6263は6時位置の12時間積算計に沿ってレッドプリントの“DAYTONA”表記を持つ、一般的なブラックダイヤルを備えるものでした。
一般的なヴィンテージウォッチの世界において、前出のRef.6239の長年に渡る圧倒的な影響によって、ポールニューマンのRef. 6263といえばいわゆるエキゾチックダイヤルとも呼ばれる仕様の文字盤が付いているものと認識されるのが普通ですが、今回のRef.6263の出品を受けて、ポールニューマンのデイトナ Ref.6263は、ポールニューマンではない、というややこしいジョークが世界中のビンテージファンの間に広まっているようです。
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ともあれ、このRef.6263をプレゼントされて以降、ポール氏は約25年間に渡ってこの時計を最も愛用していたといわれており、実際に1980年代以降に撮影された多数の彼の写真がこれを証明しています。
そして1984年にポール氏は、彼の長女の当時のボーイフレンドであったジェームズ・コック氏に、すっかり出番が減ってしまったRef.6239をプレゼントした、ということのようです。
2008年にこのRef.6263は彼の娘のクレアさんに託され、大切に保管されてきましたが、この度こうしてフィリップスによって紹介されることになりました。
100万ドルからの入札スタートが予定されているこのオークションによる収益の一部は、ポール氏自身が設立した慈善団体、シリアス・ファン・ネットワークと、セーフ・ウォーター・ネットワークに寄付されます。
2、スティーブ・マックイーン氏が映画「栄光のル・マン」で着用したホイヤー モナコ
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1971年に公開された映画「栄光のル・マン」。
主演を務めたスティーブ・マックイーン氏は、自身で「レースの好きな役者なのか、演じる事が好きなレーサーなのか、自分でも分からなくなる」と語った程のレースフリークであり、この映画を通じて、本物のレースの何たるかを表現する事を目指し、親友であったスイス人の伝説的なF1ドライバー、ジョー・シフェール氏に役作りの為のアドバイスを仰いだといいます。
ポルシェのワークスドライバーを務めた経験を持ち、ホイヤーのアンバサダーでもあったシフェール氏は、自身が所有していたポルシェ917Kを撮影の為にマックイーン氏に託し、当時最新モデルとしてホイヤーが推していたモナコの着用を勧めたといいます。
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モナコは世界初の自動巻クロノグラフムーブメントのひとつとして誕生した、伝説的なキャリバー11をスクエア型の防水ケースに搭載し、最も由緒あるF1グランプリの開催地の名を冠した本物のレーシングクロノグラフであり、その開発を指揮したジャック・ホイヤー氏渾身の力作でした。
その登場当初は斬新なルックスばかりが話題となって商業的には今一つであったようでしたが、この「栄光のル・マン」の公開によって、“King of Cool”と呼ばれたマックイーン氏と共にホイヤー モナコは鮮烈な魅力を放ち、一躍大ヒット商品となったのです。
これがウォッチビジネスのマーケティングに、映画が決定的な成果をもたらした初の事例として語り継がれる程のものになった事は、ここに繰り返すまでも無いでしょう。
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さて、6本のブルーダイヤルのRef.1133がこの映画の撮影に使用され、撮影後、うち4本は制作会社の小道具係が保管、残り2本はマックイーン氏の手に渡ったとされています。
今回出品された個体は、マックイーン氏が引き取った2本のうちの1本で、映画で、そしてプライベートにおいても彼のマシンのメカニックを務めていたハイグ・アルトゥーニアン氏に贈られたものであり、今回アルトゥーニアン氏本人から直接出品されたものです。
アルトゥーニアン氏はこのモナコを渡そうとするマックイーン氏に対して、奥様か娘にやってくれ、と断ろうとしたといいますが、マックイーン氏は既にそのモナコの裏蓋に“TO HAIG / LE MANS 1970”と刻印してしまっており、断り切れなかったといいます。
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アルトゥーニアン氏はそのモナコをしばらくは愛用していたそうですが、数年後には使用する機会も減り、結果としてこれまでの約50年に渡ってほぼ貸金庫にて寝かしっぱなしであったそうですが、それ故に当時のままのオリジナルコンディションを保っている点も、今回の落札価格に大いに好影響を与えることでしょう。
この伝説のモナコも、エスティメート・オン・リクエストという特別な扱いで出品されています。
3、シルベスター・スタローン氏が映画「デイライト」で着用したルミノール
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1996年に公開された、トンネル事故を題材としたパニック映画「デイライト」。
元救援隊チーフのタクシー運転手、キット・ラトゥーラに扮したシルベスター・スタローン氏が、ニューヨークとニュージャージー州を結ぶホランドトンネルでトンネル事故に遭遇、救援部隊と連携して、単身トンネル内部に救援に向かう、というストーリーで、過酷極まりない環境下で強靭な精神力を発揮するラトゥーラの右腕に巻かれていたパネライウォッチは大いに話題を呼び、世界中の時計ファンを巻き込んだパネライブームに火をつけたのです。
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この映画で使用されたパネライウォッチは、オフィチーネ・パネライがヴァンドームグループに参画する前の1993年に製造されたRef.5218-201/Aであり、44ミリ径のスチール製ケースに手巻きムーブメント、ブラックダイヤル、そして特徴的なリューズプロテクターを備えるベーシックなルミノール。
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オリジナルのボックスや交換用ストラップ2本、そしてスタローン氏による直筆のサイン入りメモが付属しています。
エスティメートは4万~8万ドルとなっていますが、その後のパネライの運命を決定付けたともいえる歴史的な1本にどのような評価が下されるのか、大いに注目が集まっています。
フィリップスによる“RACING PULSE”は2020年12月12日、ニューヨークにて開催されます。
情報元:phillips.com
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