2020年12月10日に行われたクリスティーズによる“Rare Watches New York: Online” と称されたオークションにおいて、1990年頃に製作されたカルティエきってのオークションピース、クラッシュ ウォッチが70,000~90,000ドルのエスティメートを大幅に上回る225,000ドル(約2,400万円)にて落札され、その歴代最高落札額を更新しました。
クラッシュ ウォッチについて
オリジナルのクラッシュ ウォッチは1967年にカルティエ ロンドンによって紹介されました。
1960年代に製造されたクラッシュ
そのルーツには数種類の説が有りますが、その中のひとつは、とある夫人が修理できないものかとロンドンのブティックに持ち込んだ、自動車事故によってケースと文字盤が溶けてしまった時計にインスピレーションを得て生まれたとされる説。
1960年代に製造されたタンクアロンジェ
そしてもう一つは当時カルティエの幹部を務めていた人物が、出張中のロンドンで自動車事故にあって亡き人となったという痛ましい事件が有り、その現場から発見された、熱によって溶けてしまった時計にインスピレーションを得たクラッシュ ウォッチを製作することで、追悼の意を表したとの説。
この2つの説において溶けてしまった時計は、共にベニュワール・アロンジェであったとも言われています。
そしてもう一つ、歴史的画家、サルバトール・ダリによる「記憶の固執」にはじまった溶けた時計のモチーフにも、大きな影響を受けたものともいわれています。
スウィンギング・ロンドンが生んだ奇跡
しかし何より、クラッシュ ウォッチが生まれた1967年のロンドンは、反逆精神に溢れる若者たちによるサイケデリック・ムーブメント、スウィンギング・シックスティーズの震源地となっており、映画、音楽、ファッション、建築といった芸術はもとより、人々の思想やライフスタイルに至るまで、ヒッピームーブメントと共に世界中に多大なる影響を与えた時代でした。
クラッシュ ウォッチはパリでもスイスでもなく、そんな時代のロンドンに生まれたからこそ、色褪せることの無い魅力を纏うに至ったのです。
カルティエにとっては例外的存在
とはいえ、いわゆるサブカルチャーに強い影響を受けて生まれたクラッシュ ウォッチは、カルティエにとってはあくまで例外的な存在であったのでしょう。
多様化が進んだ現代においては、限定モデルとして製作される頻度が高くなってきましたが、それでも長年に渡ってクラッシュ ウォッチは不定期に少数がリリースされるのみであり、それ故にコレクター達にとっては大変に魅力的な存在であり続けるのです。
クラッシュ ウォッチの“London”ダイヤルはまさに特別
中でも1967年に製作されたオリジナルと同様に “London” の表記を持つダイヤルのモデルはやはり特別です。
直近では2017年10月にフィリップスのオークションに登場した1987年製の“London”ダイヤルのモデルが175,000ドル(約1,900万円)で落札され、当時の最高落札額を記録したのに対し、2020年11月にサザビーズのオークションに出品された “Paris”ダイヤルのモデルは9,720スイスフラン(約1,060万円)に終わっているのです。
今回記録を更新した“London”ダイヤルのクラッシュ ウォッチは1990年頃に製造されたものでしたが、もし“London”ダイヤルのもっと古いモデルが登場すれば、今回の数倍の価格が付く可能性が高いといわれています。
例えば1967年のオリジナルモデルが今オークションに登場したとすれば一体幾らの落札価格が付くのでしょうか。
伝説のクラッシュ ウォッチにも注目していきましょう。
カルティエ クラッシュ London
機械:手巻き
オークション:Rare Watches New York: Online
落札日:2020年12月11日
落札価格:225,000ドル(約2,400万円)
情報元:christies.com
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