最も高価な腕時計
2016年11月12日、ジュネーブにて開催されたフィリップスのオークションにおいて、1943年にパテック・フィリップによって製作されたステンレススチール製の永久カレンダー クロノグラフ、Ref.1518がバイヤーズプレミアム込みで11,002,000スイスフラン(約11億円)にて落札され、ちょうど一年前に開催されたチャリティーオークション、オンリーウォッチでパテック・フィリップのRef.5016Aが樹立したそれまでの最高額、7,300,000スイスフランを上回り、腕時計の歴代最高ラ落札額を更新しました。
画像:phillips.com
永久カレンダークロノグラフのファーストモデル、Ref.1518
以下に事実上世界で最も高価な時計となったパテックフィリップのRef.1518について、少々まとめてみましょう。
1941年に登場したこのRef.1518は、永久カレンダーを備える世界初の腕時計型クロノグラフといわれています。そしてRef.1518の後に製作されたRef.2499と共に、半世紀近くに渡って世界で唯一の永久カレンダークロノグラフであり続け、パテック・フィリップによるグランド・コンプリケーションの象徴的存在として、広く知られるようになりました。
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どこまでも行き届いた最上級の作り込み
35ミリ径のスナップ式の裏蓋を持つカラトラバスタイルのラウンドケースには、パテック・フィリップがバルジューをベースとして大幅にモディファイを加えてジュネーブシールを所得したムーブメントが鎮座しています。
エボーシュでは単にはまっているだけのドライビングホイールにブリッジを被せて穴石を追加、ガンギ車のブリッジも独立させて先端部分のみを別部品としてポリッシュ仕上げで磨き分け、コラムホイールにキャップを追加し、優雅なスワンネック緩急真を追加するなど、各パーツの動作をより安定させると共に、多彩な微調整を可能としており、更にはブリッジやスプリングをはじめ、細かなパーツの一つ一つをより磨き込むことによって、スチールの裏蓋を閉じてしまうのが非常にもったいない程の仕上がり。
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見せることを目的としなかったこの美しいムーブメントは、パテックフィリップで培われてきたウォッチメイキングの伝統に忠実に製作されたことの証であり、全ては部品を長持ちさせる為であり、そして高精度を目指す為であるのです。
こういった意味では、今どきの見た目重視の仕上げとは明らかに性格が異なるものといえるでしょう。
その圧倒的なオーラは、ディテールに宿る
35ミリ径のケースはベゼルが細く仕立てられており、開口部を大きくとってはいるものの、3時位置の30分積算計、6時位置のポインターデイトとムーンフェイズ、9時位置のスモールセコンド、そして12時位置に月表示と曜日表示が並び、アプライドのアラビア数字のアワーマーカーの外周を覆う秒積算計インデックスとタキメータースケールからなる文字盤は、信じられない程の精密かつ正確なプリントが施されており、全く手抜きが無いそのディテールは絵も言えぬ凝縮感と精密感を醸し出し、忘れ難い感動を与えてくれるものです。
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そして各インデックスに正確にリーチする各針はあくまで鋭く、程良い立体感を持つことで、クロノグラフのお手本と呼ぶに相応しい視認性と判読性を持っています。
時、分、スモールセコンドの針は銀色で、その他の針をブルースチールに塗り分けている点にも是非注目してください。
幻のスチール製グランドコンプリケーション
そんな素晴らしさを語ればきりがないRef.1518は、281本が生産されたといわれていますが、その大部分はイエローゴールド製、約20%がピンクゴールド製、そしてスチール製は今のところ4本の例が発見されているだけに留まっています。
スチールは本来最も一般的なケースの素材ですが、最も高貴なウォッチメゾン、パテック・フィリップはあくまでプレシャスメタルを好み、スチール製は例外的に製作するに留めてきた歴史が有ります。
これがスチール製のモデルに世界中のファンが飛びつく理由となっていますが、それが全てのコレクションの中でも、最も複雑なムーブメントを持つグランドコンプリケーションともなれば、スチール製のモデルはまさに幻の存在といえるでしょう。
パテックフィリップ 永久カレンダークロノグラフRef.1518
落札日:2016年11月12日
製造:1943年
素材: ステンレススチール
ムーブメント:cal.13
情報元:phillips.com
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