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メーカー認定中古時計
既にメーカーが生産を終了した時計を探し求めるユーザーや、新品よりも少しでも安い中古で時計を手に入れたいと考えるユーザーの中にも、正規店以外で時計を購入することに不安を感じる方が少なからず存在することでしょう。
日本を流通する中古時計には贋物の混入が極めて少なく、しかもしっかりとメンテナンスされた品質の高いものが多い、との国際的な評価を集めてきましたが、そんな日本国内ですら、時計が高価なものになっていく程に、より確かなものを求める声が高まっているように感じます。
認定中古時計は、メーカーまたは正規販売店等が買い取った時計にメーカー基準のメンテナンスを加えて再版される、メーカーお墨付きの中古時計であり、その販路も正規販売店ですから、誰もが真贋や、不適切な改造などを心配することなく、安心して中古時計を購入することが可能です。
画像:www.rolex.com
そんな認定中古時計に最近注目が集まり始めていますが、これは特に目新しいものというわけではなく、筆者が知る範囲ではIWCらが少なくとも1990年代には行っていた、ビンテージウォッチのメーカーによる直接販売あたりから始まったのではないかと思われます。
日本国内ではフランク・ミュラーやブライトリングが2009年頃から認定中古時計の扱いを開始、これらに次いでリシャール・ミルも2012年頃から認定中古時計の扱いを始めていました。
中古時計市場が成長を続ける中で
「ロレックス ウォッチは長くご愛用いただけるように作られており、いくつもの人生に寄り添うこともあります。」とはロレックスのサイトにある文ですが、長期使用に耐える腕時計は、古くから中古品の売買がさかんに行われてきました。
それは単に通常よりも安価に素晴らしい時計を購入できるという利点のみに収まることなく、歴史を刻んできた唯一無二のものに憧れる人々の心理を満たし、また現代社会のあらゆる分野で叫ばれるようになった、賢く持続可能な消費の必要性に結びつき、中古腕時計ブームとして顕在化したのです。
画像:www.chrono24.com
近年では、ドイツのクロノ24が独自のエスクローサービスによって、国境を越えた法人対個人のみならず、個人対個人の取引においても安全性を大きく向上させたことで、世界最大級の時計売買プラットフォームへと成長するに至りましたが、中古時計市場は国際的な成長を続けており、2030年には一次市場の半分以上の規模へ成長するとの予測も出ています。
中古時計市場に参入する時計メーカー達
そんな中古市場の急激な成長に対して、2018年にはリシュモングループが英国の大手中古時計販売会社 “Watch Finder” を買収、また同年には世界最大級の名門正規店、ブヘラが米国の中古時計販売会社であるトゥルノーを買収、実質的に中古市場への参入を表明したことで、大いに話題を呼びました。
現在では多くのメーカーが認定中古の扱いを行っていますが、例えばジャガー・ルクルトやロンジンなどが公式サイトにてビンテージウォッチの販売を行っているほか、ブヘラの公式サイトからも、新しい取り組みである中古時計販売に注力していることが伝わってきます。
The Collectibles | Jaeger-LeCoultre認定中古
ウォッチコレクターズ | Longines認定中古
Certified Pre-Owned- | Bucherer認定中古
画像:www.jaeger-lecoultre.com
ロレックス自らが認定・保証した中古時計を購入することを可能とすることを宣言
そして2022年12月1日、遂にロレックスが正規販売店による認定中古時計の販売開始を宣言しました。
画像:www.rolex.com
ロレックス認定中古
一次流通のみならず、二次流通においても圧倒的な人気とシェアを誇るロレックスが乗り出すとなれば、その影響力はまさに絶大とみられ、ロレックスの認定中古の浸透と共に今後の中古市場がどう変わっていくのか、これは時計に関心を持つ全ての人々にとっての大ニュースといえるでしょう。
既に6か国にて認定中古時計の取り扱いを開始
ロレックスはまず6か国、つまりスイス、オーストリア、ドイツ、フランス、デンマーク、イギリスにて2022年12月初旬より、認定中古の販売を開始しました。
画像:www.rolex.com
「またこのプログラムに参加することを選択した他のロレックス正規販売店は、2023年春から参加できるようになる」とのことで、日本国内の正規販売店の多くがこのタイミングから認定中古の販売を開始するものとみられています。
ロレックス販売中
お電話での問合せ:0120-55-1430
ロレックス認定中古がもたらすもの
従来、新品よりも安価で入手できるのが中古のメリットといえますが、現時点で需要に対して全く供給が追い付いていないロレックスの多くのモデルについては、はやりこれは当てはまらないようです。時計の所有者が自分の時計を売りに出そうと考えた場合、少しでも高く売りたいと思うのが普通でしょうし、売り手にとってそれ以上のメリットを提供することは、恐らくはロレックスを以てしても困難でしょう。
となれば、少なくとも認定中古の取り扱いを開始するにあたって、正規販売店等が提示する買取価格は、一般の二次流通の企業の買取価格を意識せざるを得ず、その結果として認定中古の販売価格は国内定価、すなわち正規店の新品販売価格 を大幅に超えてしまうことは明らかです。
海外でのロレックス認定中古の販売状況について
実際に、既にロレックスの認定中古時計の販売を開始しているブヘラのサイト(Rolex Certified Pre-Owned Watches | Bucherer )にて、現時点(2023年2月)での在庫を見ると、ロレックスだけでも250本以上の時計が並んでいました。
その内容はゴールドモデルやデイトナなどの比較的高価なモデル、また2000年代以降の製造の時計が大半を占めている印象で、いわゆるビンテージ時計は見当たりません。
その中から数点をピックアップしてみましょう。
画像:www.bucherer.com
- デイトナ 116520 黒文字盤 2015年 箱、保証書付き
CHF 29,500- (~ 4,190,000 円) - デイトジャスト サンダーバード 16264 黒文字盤 2002年 保証書付き
CHF 8,300- (~1,180,000 円) - サブマリーナ 14060 2000年 付属品の表示なし
CHF 13,700- (~1,950,000 円)
全ての時計にロレックスによる認定中古のタグと、ロレックスによるサーティフィケート兼2年間の保証書が付属します。
画像:www.rolex.com
また各商品ページはオンラインでそのまま注文できるようにはなっておらず、問い合わせフォームや在庫店舗の案内があるのみで、あくまで店頭での購入を勧めているようです。
ロレックス認定中古に関する予測
ブヘラのサイトに掲載されている認定中古を眺める範囲では、認定中古ならではの安心感を得られる反面、一般的な中古時計店と比較して、それなりに高価な販売価格が付けられているように思います。
また当然ながら全ての時計はしっかりメンテナンスされて、メーカー基準での実用性能を保証されているものと思われますが、細かな部品交換の履歴などについては触れられていません。
画像:www.rolex.com
例えば1998年以前の、まだ放射性物質であるトリチウムを含む夜光塗料を使用していた時代に製造されたと思われる時計も散見されますが、針や文字盤交換の有無などについては全く記載がありません。
すなわち、特に製造年が古い時計についていえば、機能上の心配が不要な反面、もともとの仕様のままの時計が少ない可能性があります。
時計ファンの中には、中古時計を選ぶにあたって、表示通りの防水性能をはじめとする機能よりも、時計のオリジナリティを優先したい層も一定数存在しており、そのような人にとっては認定中古が最善の選択とはなり得ないかも知れません。
ビンテージウォッチの取り扱いについて
また「認定中古として取り扱うのは、一次販売から3年以上が経過した時計のみ」とのことで、逆に言えば今のところは将来的なビンテージの取り扱いに関して否定していない、といえるのではないでしょうか。
ロレックスのサービスセンターでは、現在のサービスの対象を原則として三針ではキャリバー1570以降、クロノグラフではキャリバー4030以降とするなど、一定のルールによって製造年の古い時計の修理を終了しています。
すなわち三針の時計であれば1960年代半ば以降、クロノグラフであれば1987年以降に製造された時計については、取り扱う可能性は充分にあるといえるのではないでしょうか。
しかしビンテージウォッチを求める層については、先述のオリジナリティを重視する傾向が一般的な中古時計よりも強くなると共に、ロレックスが保証を付けて売るためには、時計が古くなるほどに交換すべき外装パーツが増える傾向にある為に、実際の展開は厳しくなるかもしれませんね。
また、現在ロレックスのサービスセンターにおいて原則的にサービスを終了している時計を今後取り扱う可能性があるのかについても、大いに気になるところです。
毎年のようにどこからともなく、ロレックスが古い時計の修理受付を開始する、との静かな噂が流れて来ており、これは人気ブランドならではのデマに過ぎないのかも知れませんが、例えば手巻きのデイトナや、いわゆるギルトダイヤル採用のモデルなどの貴重なコレクターズアイテムを正規店が販売することになるなら、それは大変なニュースとなるだけに、期待が膨らまざるを得ません。
今後のロレックスに大注目
一次流通における流通量を増やすことは困難といわれるロレックスは、二次市場においては長年に渡ってその流通量を伸ばし続けているという事実があります。
まだロレックスによる認定中古の販売は始まったばかり、今後の動きに注目していきましょう。
画像:www.rolex.com
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