オメガ 2022年初の新作
2022年の年明け早々に発せられたオメガからのメッセージに、注目された方も多い事でしょう。
オメガの公式サイトのメインビジュアルに突如として現れたその画像は、一見したところでは2017年に登場し、世界中のファンを沸かせたトリロジーコレクションのスピードマスターと見間違える物でしたが、その画像の横には、
「スピードマスター キャリバー 321 カノープスコールド」
と添えられており、これが新作であることを語っていました。
画像:左:311.50.39.30.01.001 右:311.10.39. 30.01.001
世界中のスピードマスターファン達と同じく、筆者は2019年にキャリバー321が復活して以来、38.6ミリ径のシンメトリーケースにもキャリバー321が搭載される日が来るに違いないと確信していましたが、以外に思える程早く、ここに実現されたのです。
一際特別なCK2915の復刻モデル
それでは早速、現在公開されている画像やデーターを元に、その新作について詳細を見ていきましょう。
その外観は1957年に登場したスピードマスターのファーストモデル、CK2915の忠実な復刻を狙っている点で、2017年のトリロジーコレクションと共通しています。
・38.6ミリ径のシンメトリーケース
・象徴的なブロードアロー針
・面取りされたストレートラグ
・タキメータースケールが刻まれた薄くて細いベゼル
・4ミリ径のコンパクトなプッシュボタン
・二段の面取りが施された裏蓋
他にも多数の共通点を指摘する事が出来ますが、トリロジーコレクションで見せたCK2915の復刻は既に高い完成度を持っていたことから、新作に多くの共通点が見られるのは極自然なことといえるでしょう。
スピードマスター キャリバー 321 カノープスコールド
一方、トリロジーコレクションから大きく変更された点がふたつ存在することが、そのモデル名からも伺い知れます。すなわち
・キャリバー321を搭載
・カノープスゴールド製のケース、ブレスレット
公式サイトによれば、カノープスゴールドは2015年から採用を開始した、独自の配合を持つ18Kホワイトゴールドであり、その製法は明かされていませんが、75%を占めるゴールドに加えてプラチナ、ロジウム、パラジウムと、全てが貴金属のみで構成されているといいます。
カノープスゴールドの名は、太陽の1万倍の明るさを持つ恒星、カノープスにちなんで付けられたもので、その独自のホワイトゴールドが持つ一際の輝き、白さ、そして耐久性といった特性をを表現したものといいます。
トランスパレントケースバックに輝くブルーサファイヤ
また裏蓋中央部分がサファイアクリスタルに置き換えられ、歴史的なキャリバー321を可視化している点も大きいでしょう。
サファイアクリスタルの中央部にはレーザーによって伝統のシーホースが刻まれており、その目にブルーサファイヤが埋め込まれましたが、これは1947年のシーホースの誕生以来、初の試みです。
際立つオニキスダイヤル
また文字盤にブラックオニキス、風防に透明度の高いサファイアクリスタルを採用することで、漆黒の文字盤を際立たせている点にも注目すべきでしょう。
オニキスの文字盤はCNCマシンによる極めて正確な加工により、アウターリング、インナーダイヤル、そして3つのサブダイヤルを別部品として削り出して製作したものと伝えられていますが、アウターリングとサブダイヤルがインナーダイヤルに対して一段低くなっており、1960年代以降のスピードマスターに見られる文字盤上の「ステップ」が表現されています。
オニキスの漆黒の上でホワイトゴールドの針やブランドマークは極めて高いコントラストを呈しており、この新作ならではの顔をより魅力的なものとしています。
画像を見る限りでは、CK2915を再現したロゴマークや各インデックスのプリントされたホワイトもくっきりと発色しており、ボックス型サファイアクリスタル風防の厚みにより、文字盤最外周部が白っぽく見える現象が発生している点を加味しても、古いスピードマスターファンにも充分に訴求する特別感を持っているといえるでしょう。
またトリロジーコレクションでは、文字盤最外周に刻まれた1/5秒刻みのセコンドトラックまで覆い隠す、プリントによるキャリバー321搭載機独特の夜光アワーマーカーが再現されていましたが、新作ではカノープスゴールドPVDのフチを持つ夜光アワーマーカーが採用されており、その長さはセコンドトラックの手前までの短いものとなっています。
進化したブレスレット
新作ではブレスレットもケースと同じカノープスゴールドのソリッドパーツによって構成されていますが、その形状はやはり、CK2915に採用されていたRef.7077「キャタピラブレス」を下敷きとした点においてトリロジーコレクションと共通しています。
しかし時計本体に対していささか太過ぎるクラスプを備えていたトリロジーコレクションに対して、新作ではラグ幅19ミリに対してクラスプに至るまでに幅を15ミリにまでテーパーさせており、またその厚さも2.6ミリにまで絞り込んだことによって、繊細なキャタピラブレスの雰囲気がよりリアルに再現されています。
流石にオールドブレスレットが持つセミエクステンション機構の復刻は見送られていますが、より現代的なコンフォート リリースシステムによって、工具を使用することなく2ミリ程度のブレスレットの長さ調整を可能としており、現時点で実機を手に取ることは叶いませんが、その装着感も満足度の高いものと想像されます。
キャリバー321について
1946年、アルバート・ピゲ氏によって生み出されたオメガのキャリバー321(レマニア2310)は、直径27ミリ、厚さ6.74ミリという、時積算計を備える3カウンタークロノグラフムーブメントとして、当時の世界最小を誇るものでした。
スピードマスターがユニークな二重構造のケースによって、機械式クロノグラフとして非凡な耐衝撃性を持てたのは、キャリバー321がコンパクトであったことの恩恵に他ならず、キャリバー321の存在なくしてスピードマスターはムーンウォッチになり得なかったといわれています。
画像:311.50.39.30.01.001に搭載されるcal.321
ちなみに現代のキャリバー321は、1964年~1968年まで製造された第二世代の旧キャリバー321をベースとしたリプロダクトであり、これを初めて搭載したスチール製のモデルに第三世代のスピードマスターであるRef,105.003が選ばれたのは、アポロ17号に搭乗した宇宙飛行士、ユージン・ナーサン氏が実際にミッションで使用したRef.105.00に搭載されたムーブメントの再現を目指してプロジェクトが進められたから、といわれています。
とはいえ、旧キャリバー321の第一世代と第二世代の違いはほぼキャリングアームに集約されており、地板やブリッジに施されたセドナゴールドによるPVD加工と共に、そのオリジナルのCK2915との差異は気にする程のものではないと思われ、やはり今回、世界中のファンが切望してきたCK2915の外観とキャリバー321の組合せが実現したことによる巨大な訴求力の前には、大した意味を持たないことでしょう。
定価 9,570,000円
今回の新作は、まだまだその内容を書き尽くせない程に充実したものであり、かつ100%貴金属で構成されたオメガ独自のカノープスゴールドを採用している点を踏まえれば、スピードマスターファンにとっては計り知れない魅力に満ちた、夢のような時計に違いないでしょう。
ただ現代のキャリバー321は決して量産に向くものではなく、供給量が極限られていることから、実際に入手を目指すとなれば、購入者は様々な困難を強いられることになるでしょう。
しかし、いつしかキャリバー321、ソリッドバックの二重ケースとブラックのメッキ文字盤、そしてスチール製の外装の全てを備えるCK2915の生き写しが本当に登場する日が来るかもしれない、そんな淡い期待を抱かせる点においても、この新作の持つ意味は充分に大きいのです。
オメガ スピードマスター キャリバー321 カノープスゴールド
文字盤:ブラック
ムーブメント:cal.321(手巻き)
パワーリザーブ:55時間
防水性能:6気圧
情報元:www.omegawatches.jp
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