ロレックス オイスターの最先端
第一次世界大戦でその有用性を顕在化させたといわれる腕時計。
しかし当時の腕時計はあまりにも壊れやすく、ミネラルガラス製の風防を守るためにケージで全面を覆ってみたものの、これによって視認性が低下することは避けられず、常に水気や衝撃などの外乱にさらされる腕時計として、長期に渡る使用に耐えられるとは言い難いものであったのです。
ロレックスの創業者、ハンス・ウィルスドルフは、そんな腕時計を日常的に使用可能なものにするべく尽力し、1926年に世界初の完全防水時計、ロレックス オイスターを発表。
画像:www.rolex.com
以来、現代にまで続くロレックスによる信頼性とタフネス向上の為の飽くなき追求は、その後の時計史に多大なる影響を与えてきました。
そんな中でも、軍需や海洋学者達をはじめとする需要に後押しされて始まった深海への挑戦は、その最先端ということができるでしょう。
ロレックスにおけるダイバーズウォッチの進化
1953年、ロレックスは肉厚を増し、熱いドーム風防と回転式のダイビングベゼルを備えるオイスターパーペチュアルに「サブマリーナ」のペットネームを付け、ダイビング用の時計、Ref.6204として売り出しました。
画像:www.rolex.com
それから間もなくして、オイスターケースの特徴のひとつであるねじ込み式リューズの気密性を向上させることで、それまでの100m防水を200m防水にまでアップしたバリエーション、Ref.6200も加えられました。
その後もムーブメントの世代交代と共に、サブマリーナはより高い信頼性を目指してブラッシュアップを重ねますが、1959年にはリューズを衝撃から守るためのリューズガードが加えられたRef.5512が登場、200m防水が標準となりました。
1967年にはより厚い装甲とミドルケースの一つ一つに最適化された裏蓋、そしてヘリウムエスケープバルブを初めて採用したシードゥエラーが登場、防水性能が610mへと進化します。
画像:www.rolex.com
1978年頃、それまでの強化プラスチック製の風防を、硬度の高いサファイアクリスタル風防に置き換え、より大型のヘリウムエスケープバルブを備えることで、防水性能を1220mにまで高めたシードゥエラー、Ref.16660が登場。
そして2008年には新開発のリングロックシステムを採用したシードゥエラーディープシーが登場、防水性能を一気に3900mにまで押し上げました。
画像:www.rolex.com
日常生活においては完全にオーバースペックといえる防水性能を実現しながらも、直径44ミリ、厚さ18.1㎜という圧巻のサイズは賛否両論を呼びましたが、逆に高い圧力に耐える為の分厚いドーム型サファイアクリスタル風防を採用しながらも、この厚さに収められたのは、リングロックシステムの恩恵であったといわれています。
シードゥエラー販売中
お電話での問合せ:0120-55-1430
最高深度記録の歴史
画像:www.rolex.com
1953年にダイビングベゼルを備える初のダイバーズウォッチ、サブマリーナをリリースしたロレックスは同年の9月30日、オーギュスト・ピカールが操作する潜水艇、トリエステ号の外部に試作品の耐高圧時計、ディープシースペシャルを取付け、水深3,150mの海底において正常に作動することを実証し、最初の記録を打ち立てました。
1960年1月23日にはオーギュストの息子であるジャック・ピカールが操縦するトリエステ号と共に、ディープシースペシャルは水深10,916mに到達、大幅に記録を更新しました。
画像:www.rolex.com
その後50年以上に渡ってこの最深記録は破られることはありませんでしたが、2012年3月26日、映画監督であり、探検家でもあるジェームズ・キャメロンが単独潜航で水深10,908mに到達、その時潜水艇、ディープシーチャレンジャーのロボットアームに取り付けられていたロレックスの試作品は約3時間海底に滞在し、17トンともいわれる水圧に耐え抜きました。
画像:www.rolex.com
更なる進化へ
ロレックスはこの2012年の挑戦にジェームズ・キャメロンの潜水艇に備えられた試作品を基に、10年後の2022年にはその試作品と同等の11,000m防水を保証する驚異の時計、ディープシーチャレンジ Ref.126067を発売しました。
画像:www.rolex.com
実際には25%の安全マージンを取って水深13,750mに相当する圧力に耐えられるかを検査しているというその圧倒的な防水性能が、これまでの3900m防水とどれだけ違うのかを実感を持って理解することは出来そうにありませんが、その直径50㎜、厚さ23㎜という圧倒的なケースサイズもまた、リングロックシステムの恩恵によって「小型化」できたものであるといいます。
画像:www.rolex.com
これについてはリングロックシステムを持たない、1960年にジャック・ピカールの挑戦に同行して10,916mの海底の水圧に耐え抜いたディープシースペシャルが、多くの人々に腕時計として使用不能と判断されるに違いない形状であることを考えれば、何となく想像がつくことかもしれません。
画像:www.rolex.com
ロレックスとして初のチタン製モデル
ロレックスに関連する時計ででチタン製モデルといえば、これまでは弟分であるチューダーのぺラゴスが唯一の存在でしたが、今回ディープシーチャレンジにロレックス初のチタンケースが採用されたことも、非常に大きなトピックといえるでしょう。
画像:www.rolex.com
ロレックスによれば、今回ディープシーチャレンジに採用されたのはRLXチタンと名付けられたグレード5のチタン合金であり、ロレックスの社内で長年の研究によってオイスターケースの素材として最適化されたもの。
スチールより軽く、アレルギーにも強いチタンは固く、加工が困難な素材としても知られていますが、公表されている画像では、シャープでデリケートなアウトラインと歪のないポリッシュ仕上げとヘアライン加工など、現代のロレックスらしいハイグレードな仕上がりが随所に見られます。
画像:www.rolex.com
RLXチタンの採用によって、904Lステンレススチールを採用した試作品よりも30%の軽量化を実現した、といいますが、それでもブレスレットを含むその重量は250グラム程度あるようです。
250グラムは、従来の3900m防水のディープシー(約220グラム)と、プラチナ製のデイトナ(280グラム)との中間、同等の重量を持つモデルとしてゴールド製のブレスレット付きのスカイドゥエラーが挙げられます。
チタン製ならではの快適な装着感を狙った、というよりも、手首に装着出来る範囲の重量に収めるためにチタンを採用した、と表現する方が適切かもしれません。
ちなみにこれまでリファレンス番号の下一桁の番号として、唯一不明とされていた「7」が使用されている点も、時計ファンには新鮮に思える事でしょう。
すなわち、リファレンス番号の下一桁の「7」は、チタンケースを現す番号として、これまで使用されてこなかったということのようですね。
耐高圧ダイバーズに見る夢
実際の生活の中で、この11,000m防水の防水性能ならではの恩恵を受けられることは無いでしょうし、これを魅力的と感じるかは個人の判断でしかないでしょう。
更にはコンペティターであるオメガによる、6000m防水のプラネットオーシャン・ウルトラディープのリリースから時間を置かずして今回の発売に至った点にも、何となく意図的なものを感じてしまいます。
画像:www.omegawatches.jp
しかしこれは紛れもなく、ロレックスが約1世紀に渡る経験と研究を通じて生み出した最先端のオイスターケースであり、時計史上最強の腕時計なのです。
画像:www.rolex.com
いずれにせよ、その圧巻のサイズと研ぎ澄まされた意匠の数々によって、腕上で圧倒的な存在感を放ってくれることだけは確かでしょう。
最新記事 by 加藤 (全て見る)
- カルティエ タンクの歴史 - 2024年10月26日
- 【2024年夏】ボーナスで購入する腕時計! おすすめモデル一覧! - 2024年7月5日
- 2024年 ロレックス新作のまとめ - 2024年7月2日