Watches and wonders 2023の開場と共に、ロレックスはコスモグラフ デイトナの全面刷新を発表しました。
このニュースは瞬く間に世界中を駆け巡り、あらゆるメディアで取り上げられてきましたが、ここではモデルチェンジの詳細に加えて、その後1か月間の様子についても触れてみましょう。
実に23年ぶりの全面刷新
前回ロレックスがデイトナの全面刷新を行ったのは2000年のことでした。
その後も外装に様々な変更を加えた新作の追加を継続していましたが、デイトナのエンジン、キャリバー4130には様々なマイナーチェンジこそ重ねられてきましたが、基本的には変わることはありませんでした。
キャリバー4130は28,800振動/時のフリースプラングテンプを持ち、ロレックスらしい圧倒的な高精度と72時間のパワーリザーブを誇ると共に、針飛びを起こさず、安定した動作を約束する水平クラッチ式のクロノグラフ機構を備えており、多くのメーカーから個性的な「自社製」クロノグラフが多数出揃った現在においても尚、抜群の性能と信頼性を誇るものです。
しかしデビューから既に20年以上、近年では新作発表の時期が近づくたびに、ロレックスはキャリバー4130にメスを入れてくるに違いない、との噂がまことしやかにささやかれてきたのです。
そしてコスモグラフ誕生60周年の節目の年にあたる2023年、これが現実のものとなりました。
新しい自動巻クロノグラフ ムーブメント、キャリバー4131
画像:https://www.rolex.com/
外観の変更も気になりますが、まずはムーブメントから見ていきましょう。
この度、キャリバー番号は4130から4131に変更されました。この「1」のみに留まったキャリバー番号の変化は、4131は全くの新設計ではなく、4130の改良版であることを示していました。
やはりロレックスを以てしても、充分に優秀なキャリバー4130の基本設計を越えるムーブメントを作り出すのは容易ではない、ということでしょうか。
これまで公表されている範囲で、実際に変更された部分を挙げてみましょう。
- 1,2015年の発表以来、徐々に採用モデルを増やしてきた、クロナジーエスケープメントを採用したこと
- 2,ローター軸の支持にボールベアリングを採用、ローターの回転がよりスムーズになったこと
- 3,ローターのデザインを変更したこと、更にプラチナモデルにおいては、18ctゴールド製のローターを採用したこと、しかしキャリバー番号は4131で不変です。
- 4,ブリッジにロレックスの再解釈したコート・ド・ジュネーブ仕上げを施したこと、実際にロレックスのサイトにてキャリバー4131を詳細に見ると、ストライプとストライプの間に細いポリッシュ仕上げの面を挟んでいる事に気付きます。
少なくとも上記の1と2は、キャリバー3200系でも採用されている事が知られています。
脱進機効率を大きく向上させるといわれるクロナジーエスケープメントを採用していながら、今回の発表ではキャリバー4131のパワーリザーブは、キャリバー4130と同一の72時間となっています。
これは製品の性能表示を控えめにしておこうとするロレックスの習慣がそうさせているのか、または実際にその分メインスプリングを短くするなどして72時間に調整し、更なる耐久性向上を狙ったのか。
実際のところは少なくとも実機を動かしてみなければ何とも言えませんが、もしかするともっと大きな理由が隠れているのかも知れませんね。
外装の変化 1、ケース厚
画像:https://www.rolex.com/
旧キャリバー4130搭載機のケース厚が12.4ミリであったのに対し、2023年に登場したデイトナは0.5ミリ薄い11.9ミリとなりました。
個人的にはデイトナのケースに対して、特に薄いとの印象を持った事はありませんでしたし、タフネスを重んじるロレックスが薄さを意識して作り込むこともないと思えますが、一方で無駄に厚くすることは避け、効率の良いレイアウトで無駄な厚みを出さないようにとの配慮はあったはずです。
その結果としてデイトナはその横顔もスマートに収まっており、一般的な自動巻クロノグラフの中では確かに薄い方であるといえます。
それを今回、僅かながらもより薄くなったことは決して偶然ではなく、意図して薄くしたものと考えられます。
外装の変化 2,ベゼル
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これはセラミック製のセラクロムベゼル搭載機にしかあてはまらない違いではありますが、今回ロレックスは、セラクロムベゼルの外周をミドルケースと同一のメタルで覆いました。
ロレックスの説明通り、1965年に登場したといわれるRef.6240やRef.6241などが備えていた、アクリル製のリングがはめ込まれたスチールベゼルに似た外観を持つようになりました。
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ベゼルにメタルのふちが付いたことで、ベゼルの直径が若干大きくなったようにも見えますが、公表されているケース径は40ミリで不変です。
ただ、ベゼルの外周は日常使用においてぶつけやすい部分であり、ここにメタルが使用されることによって傷つきやすくなってしまうのではないか、との疑問が残ります。
外装の変化 3,文字盤
アワーマーカー、およびインダイヤルのふちが細くなり、2000年まで生産されたキャリバー4030を搭載していた時代、すなわちRef.16520などに近いシャープな雰囲気を持つようになりました。
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インダイヤルの位置や大きさには目に見える違いはないようです。
また多くの現行モデルにおいて文字盤上6時位置の”SWISS MADE”に添えられている王冠マークは、デイトナにおいてもセコンドトラックの6時位置に存在します。
外装の変化 4,ラグ
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旧モデルではスチールモデル、ロレゾールモデル、イエローゴールドのブレスレット付きのモデルで採用されていた旧来のラグの形状、すなわちラグ裏の面が、ラグ先に至るまでなだらかな傾斜でつながっている形状が廃止になり、例えばプラチナモデルなどに見られる、ラグの先端部分の裏蓋側に、裏蓋に対して水平な平面を持つタイプで統一されたようです。
ロレックスのオイスターケースは、ポリッシュによるケース形状の変化が目立たないように配慮された形状を意識していると個人的に感じていましたが、このラグ先の裏蓋側のような小さな平面は、変化が比較的分かりやすく出てしまう為に、少々意外な感じを受けます。
一方で今回廃止になったラグ形状では、3時側のラグが9時側のラグよりわずかに細かったのに対して、今回統一されたラグ形状では左右がシンメトリーとなり、意匠がより落ち着いた印象です。
外装の変化 5、裏蓋
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今回登場したデイトナのプラチナモデルには、ロレックスのプロフェッショナルモデルとして初めて、トランスパレントの裏蓋が採用されました。
元々美観以上に信頼性の向上に終始してきたロレックスのムーブメントは部品点数も少なく、大部分が大型のブリッジで覆われているだけに、視覚的な楽しさという点では少々物足りないかもしれません。
しかし先述の通り、プラチナモデルにのみ採用されている18ctゴールド製のローターをはじめ、ブリッジに施されたロレックス独自のコート・ド・ジュネーブ、そしてもちろんテンプやコラムホイール等の動きもサファイアクリスタルを通じて鑑賞可能で、ファンにとってはうれしい限りでしょう。
かつては紫外線の影響による潤滑油の変質やケースの気密性の低下など、裏蓋のトランスパレント化には様々な懸念がつきものでしたが、やはりこれらの問題は現在の技術がほぼ解決していると見られ、今後はロレックスもトランスパレントケースバックを多用してくるかも知れません。
新しいデイトナの全ラインナップ
今回発表されたモデルの詳細について、ここにまとめておきましょう。ケース径40ミリ、100m防水、キャリバー4131搭載などのスペックはすべて共通です。
Ref.126500LN オイスタースチール製
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オイスタースチール製ケース、ブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
イージーリンク付き
2種類のダイアル
- ホワイトダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ブラックダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
価格 各1,795,200円
Ref.126503 イエローロレゾールモデル
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オイスタースチール&イエローゴールド製ケース、ブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
イージーリンク付き
4種類のダイアル
- ホワイトダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ブラックダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ゴールデンダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ダイヤモンド入りブライトブラックダイヤル、ゴールデンのインダイヤル:8個のダイヤモンドのアワーマーカー アワーマーカーの台座と針に18ctゴールド 長短針にクロマライトディスプレイ
価格 2,319,900円
ダイヤモンド入りダイアルのモデルは 2,556,400円
Ref.126518LN イエローゴールド製、オイスターフレックスブレスレット付き
画像:https://www.rolex.com/
イエローゴールド製ケース
オイスターフレックスブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
グライドロック エクステンション システム
ブラックのセラクロムベゼル
価格 3,642,100円
ダイヤモンド入りダイアルのモデルは 3,878,600円
Ref.126508 イエローゴールド製
画像:https://www.rolex.com/
イエローゴールド製ケース、オイスターブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
イージーリンク付き
価格 4,701,400円
ダイヤモンド入りダイアルのモデルは 4,937,900円
Ref.126518LN、Ref.126508共通の6種類のダイアル
- ホワイトダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ブラックダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ゴールデンダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ブラックダイアル、ゴールデンインダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ゴールデンダイアル、ブライトブラックインダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ダイヤモンド入りブライトブラックダイアル、ゴールデンのインダイアル:8個のダイヤモンドのアワーマーカー アワーマーカーの台座と針に18ctゴールド 長短針にクロマライトディスプレイ
Ref.126519LN ホワイトゴールド製、オイスターフレックスブレスレット付き
画像:https://www.rolex.com/
ホワイトゴールド製ケース
オイスターフレックスブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
グライドロック エクステンション システム
ブラックのセラクロムベゼル
価格 3,815,900円
ダイヤモンド入りダイアルのモデルは 4,052,400円
Ref.126509 ホワイトゴールド製
画像:https://www.rolex.com/
ホワイトゴールド製ケース、オイスターブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
イージーリンク付き
ケース径40ミリ
価格 5,051,200円
ダイヤモンド入りダイアルのモデルは お問い合わせ
Ref.126519、Ref.126509共通の3種類のダイアル
- ブライトブラックダイアル、スチールインダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- スチールダイアル、ブライトブラックインダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ダイヤモンド入りブライトブラックダイアル、スチールのインダイアル:8個のダイヤモンドのアワーマーカー アワーマーカーの台座と針に18ctゴールド 長短針にクロマライトディスプレイ
Ref.126515LN エバーローズゴールド製、オイスターフレックスブレスレット付き
画像:https://www.rolex.com/
エバーローズゴールド製ケース
オイスターフレックスブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
グライドロック エクステンション システム
ブラックのセラクロムベゼル
価格 3,815,900円
ダイヤモンド入りダイアルのモデルは 4,052,400円
Ref.126505 エバーローズゴールド製
画像:https://www.rolex.com/
エバーローズゴールド製ケース、オイスターブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
イージーリンク付き
価格 5,051,200円
ダイヤモンド入りダイアルのモデルはお問い合わせ
Ref.126515LN、REf.126505共通の3種類のダイアル
- ブライトブラックダイアル、サンダストのインダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- サンダストダイアル、ブライトブラックのインダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ダイヤモンド入りブライトブラックダイアル、サンダストのインダイアル:8個のダイヤモンドのアワーマーカー アワーマーカーの台座と針に18ctゴールド 長短針にクロマライトディスプレイ
Ref.126506 プラチナモデル
画像:https://www.rolex.com/
プラチナ950製ケース、オイスターブレスレット
セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ
イージーリンク付き
トランスパレントのケースバック
チェストナットブラウンのセラクロムベゼル
2種類のダイアル
- アイスブルーダイアル:18ctゴールド製アワーマーカーと針、クロマライトディスプレイ
- ダイヤモンド入りアイスブルーダイアル:8個のバケットカットのダイヤモンドと3個のダイヤモンドのアワーマーカー アワーマーカーの台座と針に18ctゴールド 長短針にクロマライトディスプレイ
価格 お問い合わせ
現在、そして今後
知名度、人気、ステイタス等、多くの面において最高の評価を集め続けるデイトナ、そのコレクションの総入れ替えによって、これまで絶大な人気を集めてきた従来のモデルたちが全て廃盤となりました。
今回のモデルチェンジにおいても、最新が最良を貫いていることに違いはないようですが、人々が抱く憧れというものは、そんなに単純なものとは限らないのが現実でしょう。
幾つかの人気モデルについて、カカクコムにてここ一年程度の価格の動向を見てみましょう。
プラチナモデル アイスブルーダイアル 116506
画像:https://kakaku.com/
2022年3月に2,600万円以上にまで駆け上ったこのモデルの価格は、その後全体の相場下落の中で下落に転じるも、同年8月には品不足によって2,400万円位まで戻しますが9月の末には早くも下落、2023年3月末のデイトナ全面刷新のニュースを受けて再び2,000万円台に戻すもその後は落ち着く傾向にあり、現在は1,800万円前後を推移しています。
イエローゴールドモデル グリーンダイアル 116508
画像:https://kakaku.com/
このモデルも2022年3月に18,000万円という最高値を付けた後下落に転じますが、2023年に入ってからは再び上昇を開始、デイトナ全面刷新のニュースに鋭く反応して2,000万円以上の売価をつける店も出現したようですが、約一か月でまた急落して1,400万円前後で推移しています。
スチールモデル ホワイトダイアル 116500LN
画像:https://kakaku.com/
実質的に最も人気が高いと思われるこのモデルも2022年3月に700万円という最高値を付けた後、下落に転じましたが、同年末には価格上昇に転じ、ロレックスのデイトナ全面刷新のニュースにも反応が見られましたが、現在は500万円以上で推移している状況です。
これで二世代前となったRef.116520などについては、その生産終了後、未使用品などの特別な例を除いて、全体の相場変動に揺られながらも概ね高値安定を続けてきました。
画像:https://www.rolex.com/
新型のデイトナがいつ市場に出回り始めるのかもまだ不明の状況ですが、現在のデイトナの多くのモデルは実際に購入可能な層がある程度絞られてしまう価格帯であることもあって、恐らくRef.116500の世代も、Ref.116520の世代と同じような比較的落ち着いた動きになるのではないかと思えます。
今後もその動向に注目していきましょう。
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