アンディーウォーホル ロレックス

「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」

2019年9月21日~11月17日にかけて、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーにて「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」と題された、ジャン=ミシェル・バスキア氏の遺した絵画やドローイング約130点を世界中から集めた日本初の大規模な展覧会が開催されました。

ジャン=ミシェル・バスキア
画像:christies.com

今回の展覧会は、バスキア研究の世界的権威であるディーター・ブッフハート氏のキュレーションによって、「メイド・イン・ジャパン」をテーマに、日本の歴史や文化が親日家であったバスキア氏の作品に及ぼした知られざる影響を浮き彫りにする、とのテーマのもと行われたものでした。

このバスキア氏に多大なる影響を与えた事で知られるのがアンディ・ウォーホル氏。
今年の5月、アンディ・ウォーホル氏のコレクションであったロレックスがクリスティーズで高額落札されています。

バスキア展の開催にちなんで、今回はウォーホル氏のロレックスについてご紹介したいと思います。

アンディーウォーホル
画像:christies.com

「ウォーホル・コレクション」

偉大なるアーティスト、アンディ・ウォーホル氏が他界して約一年後の1988年。アンディ・ウォーホル財団の協力によってサザビーズが開催した「ウォーホル・コレクション」と題したオークションにおいて、ウォーホル氏が生前に収集していた絵画や彫刻、家具、ジュエリー、時計などの3,500点に及ぶコレクションが一気に出品、販売されました。

このブログの読者の方たちにとっても、熱心な時計コレクターでもあったウォーホル氏による、プラスチック製のガジェットからパテック・フィリップのRef.2526やRef.2503などの歴史的名品にまで及ぶ313点ものウォッチコレクションは、大変に興味深く感じられることでしょう。

実はその中の一本、ロレックス製のクロノグラフ、Ref.3235が2019年5月13日にスイス・ジュネーブで開催されたクリスティーズの「レア・ウォッチ」と題されたオークションに再び出品され、471,000スイスフラン(約5,100万円)という高額での落札を記録したのです。

サザビーズ ウォーホル・コレクション
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ウォーホル氏が選び、所有したロレックス クロノグラフ Ref.3235

Ref.3235は1943年製作の、ねじ込み式リューズを持つクロノグラフとして極初期のものであり、圧倒的な人気と最高の資産価値を誇るデイトナの原形といえるもの。

ロレックス クロノグラフ ref.3525
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当時のロレックスの象徴的な素材使いの一つであるスチールと18Kピンクゴールドのコンビで製作された直径約35mmの防水ケースに搭載されたムーブメントはバルジューベースのcal. 13”’ 23 VZであり、ベゼルに用いられているピンクゴールドと同色で作られたアワーマーカー、3時位置に30分積算計、9時位置にスモールセコンドを備える文字盤には、外周からタキメーター、テレメーター、そしてムーブメントの5振動/秒に合わせた1/5秒刻みのセコンドトラックが極めて精密にプリントされています。

ロレックス クロノグラフ ref.3525 文字盤
画像:christies.com

ウォーホル氏の審美眼を刺激した時計

そのどこまでも行き届いた丁寧な仕事ぶりが醸し出す、古典的クロノグラフらしい精悍な顔立ちはまさに圧巻であり、ピンクゴールドの柔らかな輝きと共に、この時計に上質な気品を与えています。

またこの時計が1988年にサザビーズのオークションに登場した際にはレザーストラップがフィットされていましたが、その後のオーナーによって、時計本体と同世代で同じ素材使いのエクステンションブレスに交換されており、コンディションも含めてパーフェクトなマッチを見せている点も特筆すべきでしょう。

ロレックス クロノグラフ ref.3525 裏蓋
画像:christies.com

またそのコンディションをご覧いただければ分かるとおり、ウォーホル氏自身はこの時計を含むたくさんの時計達を自宅の引き出しの中に保管して、実際に着用することはなかったようですが、かといって銀行の貸金庫に預けてしまうこともなく、いつも身近に置いていたといいます。

「彼は常に自らが選んだコレクションによって刺激を受けながら、日々の創作活動の糧としていた。」

これは長年に渡ってウォーホル氏のマネージャーを勤めていたフレッド・ヒューズ氏による証言です。

バスキアとウォーホル

ジャン=ミシェル・バスキア氏について

1960年ブルックリン生まれのジャン=ミシェル・バスキア氏は1976年、グラフィティ・アーティスト、アル・ディアス氏と「SAMO」を結成、ニューヨークの地下鉄やストリートに挑戦的なスプレーペインティングを次々と描き続けます。

許可無く公共の場に描かれたこれらの作品は悪質な落書きと捉えるのが一般世間というものですが、これが見識者達によってアートとして高く評価され、若くして注目を集めました。

1980年には「タイムズ・スクエア・ショー」と題したグループ展において初めて公的な場で作品を発表、1982年にはキース・ヘリング氏やバーバラ・クルーガー氏の助力のよってニューヨークで個展を開けるまでになり、各方面からの賞賛を浴びるようになります。

ジャン=ミシェル・バスキア
画像:christies.com

こうして社会を風刺し、自らドロップアウトして自由を求め、葛藤と苦悩に満ちた暗闇の中でもがいていたバスキア氏の前に、突然現代を代表するアーティストへの広く、明るい道が開けてしまったのです。

と同時に、自身の理解が及ばぬままにブルジョアへの道へと迷い込み、成功すればする程に自身の望まぬ世界に引きずり込まれていったのです。

そんな目まぐるしく変化を続ける状況の中で、バスキア氏は自虐的とも思えるほどの大量のエネルギーを作品にぶつけるようになっていったのです。

アンディ・ウォーホル氏との出会い

1983年にはアンディ・ウォーホル氏と知り合い、スタジオをウォーホル氏の所有するビルに移して交流を深めながら、共同制作にも取り組むようになりました。

長年に渡って様々なアーティストたちと交流し、創作活動を続けてきたウォーホル氏なら、自分の内なる葛藤を理解してくれるかも知れない、バスキア氏はそう考えたのかも知れません。

ウォーホルとバスキア
画像:christies.com

共同制作は1987年のウォーホル氏の死まで続きましたが、ウォーホル氏の死後、またひとり取り残されたバスキア氏は過度の孤独に耐えらなくなり、薬物依存症を悪化させてしまいます。

そして1988年、バスキア氏は僅か27年という短すぎる生涯に終止符を打ちました。

ここでは今回の展覧会をきっかけに、改めてバスキア氏に多大なる影響を与えたアンディ・ウォーホル氏にもスポットを当ててみましょう。

アンディ・ウォーホル氏の創作活動

ポップアートの先駆者としてあまりにも有名なウォーホル氏は1928年、ペンシルベニア州ピッツバーグに生まれ、日光アレルギーと虚弱体質に悩まされながらも若くして芸術の才能を花開かせ、カーネギー工科大学を1949年に卒業後、ニューヨークに移ってからはヴォーグ誌やハーパス・バザー誌などの広告やイラストで早々に頭角を現し、1952年には新聞広告美術の「アート・ディレクターズ・クラブ賞」を受賞するなど、商業デザインやイラストレーションで成功を収めました。

アンディーウォーホル ニュートン 
画像:christies.com

またウォーホル氏は1950年代当時、まだ弱小であった不滅のジャズ・レーベル、ブルーノートをはじめとするジャズのアルバムカバーを彩る数々の傑作を残していますが、この経験はビジュアルのみに留まらず、音楽やファッション、そしてスピリットなども含めたカルチャーそのものへの極めて刺激的なアプローチへの布石となったものと思われます。

ポップアート、そしてロックンロール

1960年代早々には「ポップアート」を創出。

大量生産、大量消費に沸いた当時のアメリカを象徴するかのような、シルクスクリーンプリントを用いた作品の量産を始めます。

そして1964年には創作活動の拠点として伝説となった「ファクトリー」を生み出し、世界中の次世代のカルチャーを創出するアーティストたちが集い、交流する場として世界中からの注目を集めました。

アンディーウォーホル バナナ
画像:christies.com 腕にはカルティエ タンク

1965年にはロックバンド「ベルベット・アンダーグランド」を見出して、ウォーホル氏が企画していた照明、映像、サウンド、歌詞、ファッションのすべてが融合し、聴衆までも巻き込むという、当時としては極めて先進的であった異次元のアート・エクスペリエンス、「エクスプローディング・プラスティック・イネヴィタブル」での演奏を要請。

これがニューヨークの文化人達に熱狂的に支持され、このライブパフォーマンスは伝説として語り継がれるまでのものとなりました。

そしてその後のあらゆるカルチャーの表現に決定的な影響を与えると共に、ベルベット・アンダーグランドはウォーホル氏のプロデュースによるメジャーデビューの切符を掴んだのです。

ロレックス クロノグラフ ref.3525 ウォーホルのコレクション

製造年:1943年頃
外装:ステンレススティールXピンクゴールド
ムーブメント:cal.13 ” ’23 VZ 手巻き
出所:ビジュアルアーツアンディ・ウォーホル財団
落札日:2019年5月13日
落札価格:

情報元:christies.com

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加藤

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